第1回足りていますか 栄養素

食は運動と同様、健康の維持、改善に欠かせません。しかし、栄養素やカロリーなどの言葉が出てくると、急に難しく感じてしまいます。第1回は「足りていますか 栄養素」をサブテーマとし、栄養素とは何か、体の中でどんな働きをしているか、などを専門家に聞きました。

バランス良い食事で必須栄養素を取り込もう

食生活の変化で病態変わった

長谷川
日本人が目指すべき理想の食生活、そして栄養の取り方とは、どんなものでしょうか。食事と健康は、どんな関係がありますか。
向井
日本人の食生活は、戦後大きく変わりました。米や野菜の消費が減り、牛乳・乳製品、肉類の消費が増えています。魚介類の消費も一時期は増えましたが、再び減っているのが現状です。
こうしたことから、日本人の動物性脂肪の量が多くなっています。脂肪量が増えれば肥満になり、運動不足やストレスなどの悪い生活習慣が身に付き、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を引き起こします。そして、いずれ動脈硬化を招き、狭心症や心筋梗塞などの恐ろしい心臓病につながります。
逆に言えば、以上のようなことをしないことが、私たち日本人が目指すべき理想の食生活であり、栄養の取り方といえます。食生活の変化が私たちの体に、とても大きな影響を与えていることを、まずは認識してください。
長谷川
栄養素とは何でしょう。私たちが日常的によく使う栄養という言葉と、どう違いますか。管理栄養士の立場から、栄養素を多く含む食品と、その働きを説明してください。
森下
栄養は必要な栄養素を体内に取り込み、体をつくる過程のことをいいます。栄養素は食べ物の中に含まれる物質のうち、体に必要な成分のことです。
5大栄養素、それが、タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルです。このうち、タンパク質、炭水化物、脂質を3大栄養素と呼び、エネルギーとなる栄養素です。タンパク質は筋肉や骨、血液など体のあらゆるパーツをつくる材料となります。炭水化物は生きるための主たるエネルギー源で、最小単位のブドウ糖は脳のエネルギー源となります。細胞膜やホルモンなどの材料になるのが脂質です。
私は普段、メタボ対策に取り組んでいます。該当者の多くがお手軽な食事をされていると感じています。そのため、ビタミン・ミネラルが不足しています。栄養素を過不足なく取ることで無駄食いを防げます。普段の食事に野菜、海藻、きのこを取り入れることでバランスの良い食生活になると呼び掛けています。
病気の流れ

生活習慣病の一つ 脂質異常症

長谷川
栄養素の摂取について、日頃どんなことを感じていますか。管理栄養士であり、また病院勤務という臨床的な立場から、お聞かせください。
鈴川
昼間は奥さんが働きに出て家にいないので、昼食はカップ麺やインスタントラーメン、冷凍チャーハンなど、主食のみを食べているという高齢の男性がいます。朝食は菓子パンと飲み物だけという人も、少なくありません。
食事の偏りや運動不足などが続けば、生活習慣病になります。生活習慣病の一つが脂質異常症です。いわゆる、脂の取り過ぎです。チョコレートやナッツ類、ケーキ、アイスクリームなどには多くの脂質が含まれているので、脂質異常症の患者さんは、こうしたものが好きな人が多いと感じています。チョコレートは健康にいいとも聞きますが、ほどほどに--というのが、よいですね。

数字の「見える化」で変化を知る

長谷川
食事の取り方が健診データにどう影響しているか静岡市の状況を紹介してください。
深澤
特定健康診査の検査結果の数値は、体の健康状態を「見える化」してくれます。健診を毎年続けて、経年的にみていけば、自分の血液がどう変わっているかよく分かります。数値の変化が生活習慣などの変化に影響されていることに気付くことができます。
静岡県全体の特定健診結果を100とした標準化該当比で、静岡市はメタボ該当者、高血圧症・脂質異常症有病者が多いのが特徴です。
国民健康保険加入者のデータで血糖値を示すHbA1c有所見率の経年推移をみると、28年度は静岡市が60.9%で全国平均よりも5ポイント以上高く、ここ数年間、こうした傾向が続いています。
HbA1c有所見率の経年推移表

積極的にタンパク質摂取を

長谷川
ここまでのお話を踏まえて、健康を維持し、健やかな食生活を送るための秘けつがあれば、お聞かせください。
佐橋
私たちの体の60%から70%は水分でできていますが、それ以外に大変、重要な栄養素として筋肉や皮膚、骨、血液などをつくるタンパク質に注目しています。タンパク質はアミノ酸の連なったものです。アミノ酸の中には体内で作ることが出来ないために食事から取らなければならない9種類の必須アミノ酸があります。食事ではこの必須アミノ酸を多く含む卵、肉、青魚、大豆製品などの摂取が必要です。特に、中高年世代は低栄養が課題となってるのでカロリーの過剰にならないようにして、積極的にこれらの食品をとる必要があります。
向井
ただし、タンパク質の取り方には注意が必要です。腎臓に負担がかかるため、気を付けてほしいと思います。それ以外は佐橋先生のご指摘通りです。
座談会
5大栄養素
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